事業の基本は「課題解決」だと言える。株式会社OWNERS CLUBが推進する「メンパク」はマンション経営者が抱える様々な課題を解決するために誕生した。
こうした業界の新しいトレンドをいち早くキャッチし、次のビジネスを模索する株式会社MTKの井端一雅氏と、井端氏が注目する株式会社OWNERS CLUBの岩屋秀一朗氏とをセッティングした。
大規模修繕は決して、マンション経営者だけの課題ではない。人生100年時代において「住む場所の質」が求められることでもある。
似たような業界なのに接点があまりないもの同士が語る、これからのマンションとは?

Photographing 石橋俊治

【左】井端一雅●株式会社MTK 一級建築士事務所 常務執行役員/東京本店長
株式会社MTKは1999年3月12日の設立。マンション等建築物の長期修繕計画の作成、大規模改修・設備改修コンサルティング、耐震診断、耐震補強設計・監理、各種建築・設備法定点検、年次点検、建替えに伴うコンサルティングを業務とする。
株式会社MTK

【右】岩屋秀一朗●株式会社OWNERS CLUB 代表取締役社長
株式会社OWNERS CLUBは2005年4月1日の創業。「求められている今ないものを創造し、提供する」を経営理念に掲げ、「メンパク」を展開。「メンパク」とは、毎月定額のメンテナンス料で外壁補修や塗装、防水工事等、マンション外部全体の修繕工事とその後のメンテナンスを15年間継続してご提供する日本初の定額制マンション修繕サービス。
株式会社OWNERS CLUB

「メンパク」は単なる大規模修繕のサービスではない。

井端一雅●株式会社MTK 一級建築士事務所 常務執行役員/東京本店長
Photographing 石橋俊治

─MTKとはどういう会社なのですか?
井端:1999年に大阪で創業した一級建築士事務所です。分譲マンションの大規模修繕のコンサルティングを中心に、年に約60~70件、トータルで約1000件を手掛けてきた実績があります。
東京本店を開設したのは、創業20年にあたる2018年のことです。今後、少子化小世帯化の影響によって新築マンションの建設は減っていくと思われます。すると我々が本業とする分譲マンションの大規模修繕コンサルティングも減少することになります。そのため本社のある阪神エリアより10倍の市場があると言われている首都圏エリアを、今から取り込んでおきたいと考えたからです。
とはいえ、少子化小世帯化によって首都圏も先細りになるのは目に見えています。また、競合も多くコンサルタントフィーの価格競争が厳しくなる上に、設計コンサルタントと施工会社の癒着やバックマージンを要求する悪徳コンサルタントと一線を画する必要もあります。
我々としては来るべき未来のために、分譲マンションの大規模修繕のコンサルティングを核としながら、事業のすそ野を広げて行かなければならないと考えているところです。
─同様にOWNERS CLUBとはどういう会社なのですか?
岩屋:2005年に福岡県で創業し、「メンパク」という事業を展開しています。
元々は、岩山産業という1964年に祖父が起業し、父親が継いだ会社の代表を三代目として務めていました。岩山産業は受変電設備の品質管理や試験調整、機械器具設置工事などを請け負う、B2Bの会社です。ちなみに現在は弟が継ぎ、私は専務を務めています。
OWNERS CLUBを起業することになった事の起こりは、北九州にある小さな会社が集まったTSSというグループが切っ掛けです。ここは、各社の力を合わせることでトータルにお客様を支援するために生まれた企業連携体です。私は岩山産業の代表として参加していました。
このTSSの集まりに、不動産のオーナーとして築40年を超える賃貸物件を40棟くらい管理している方が出席していました。その方は「古い物件ばかりなので修繕費がかさむ」という悩みを抱えていました。
毎年、計画を立て予算を取って修繕しても、計画通りに行かないことも多々あったからです。予算以上に費用が掛かることもあるし、逆に予算を下回った場合、今度はそこに税金が掛かってしまう問題もありました。
そのため、毎月定額で費用を払い、業者に物件のメンテナンスをしてもらっていました。このシステムを事業化できないだろうかと提案したことに対し、私が手を挙げたことで誕生したのがOWNERS CLUBです。


メンパク
毎月定額のメンテナンス料で、賃貸マンションの修繕を15年間継続してご提供する修繕サービ。

─そういう経緯があったのですね。
岩屋:実は私は岩山産業の代表でしたが、自分で起業したいと思っていたんです。元のアイディアもあり、メリットもわかっていたので、私は資料を作成したり営業をかけるなどして事業を軌道に乗せるよう邁進していました。
─「メンパク」について教えてください。
岩屋:毎月定額のメンテナンス料で、賃貸マンションの修繕を15年間継続してご提供する修繕サービです。
不動産のオーナーは、不動産の修繕をする場合、業者に依頼します。業者はどれくらい修繕をしなければいけないかを診断し、見積を出し、OKが出れば期間を決めて一気に修繕工事をします。そして工事が終わったら請求するという流れが一般的です。
「メンパク」も修繕物件を診断しますが、建築物は東面と西面で痛みが違う場合がありますし、直すべき箇所は異なります。なので、一気に修繕工事をせず、工事を分けて、最適なタイミングで最適な修繕をします。工事も外壁補修、塗装、防水工事など、一般的なマンション外部全体の修繕工事と変わりありません。
─なるほど。
岩屋:一番、肝となっているのは、修繕をすれば終わりというわけではなく、15年という長期の契約の中で、メンテナンスもつけているところです。
そのことによってどのようなメリットがあるのかというと、通常、大規模修繕を行っても、15年たってまた大規模修繕をしなければならないという場合があります。
最初の大規模修繕に2000万円掛かっていたとすると、15年後には建物は劣化するので15%から20%は上昇します。すると2300万円から2400万円は掛かってしまう計算です。それが30年後、45年後となると恐ろしい金額なります。
しかし、15年の中でメンテナンスをし続けることで、建物を良い状態に保てます。そのため、その後の大規模修繕の費用を抑えることができるのがメリットです。
─いいですね。
岩屋:不動産のオーナーは大規模修繕をするとき、銀行から借り入れますが、定額制にすることでその必要はありません。つまり、金利を払う必要がなくなるのです。
また、不動産のオーナーの悩みは金利の負担ではなくキャッシュです。20年かけて返せばよいのなら金利が高くても大丈夫なのですが、10年で返さないとなるとキャッシュが圧迫されて不動産経営が成り立ちません。
「メンパク」だと15年と決まっているのでキャッシュフローが安定します。しかも、それを全額、経費として処理できます。
井端:毎月の賃貸料のなかで管理費を取り、それを払えばいいだけでということですね。
岩屋:そうなんです。通常、不動産のオーナーが大規模修繕のために資金を貯めておこうとすると、それは利益とみられて税金を払わなければなりません。「メンパク」だと無駄がなくなります。
─失礼な言い方なんですが、15年の間にOWNERS CLUBが倒産した場合、どうなるのでしょう?
岩屋:実は15年計画ですが、最初の10年くらいで全体の工事を終わらせてしまいます。つまりOWNERS CLUBが先に費用を負担します。なので、仮にOWNERS CLUBが倒産すると不動産のオーナーは得をするんです(笑)。
─なるほど(笑)。
岩屋:また、メリットは不動産のオーナーだけではありません。業者は痛みの激しい部分から修繕に取り掛かればいいし、閑散期にその工事をやってもいいので、仕事のバランスが取れます。
─井端さんは「メンパク」を面白いと思ったそうですが、どのような理由からなのですか?
井端:建物は一生ものです。不動産のオーナーにすれば、修繕しないでなるべく長持ちさせたいと考えています。しかし、大規模修繕は必要となります。賃貸人に「大規模修繕をやるので賃料を上げます」と言ってもなかなか通るものではありません。分譲マンションにある修繕積立金という制度がないのでお金を貯めると課税されます。そのため不動産のオーナーはいろいろ工夫されているみたいです。
3年前ほど前に、オーナー達の集まるある会合に出席したとき「メンパクというのがあって」という話が出て知りました。魅力的なビジネスを考える人がいるもんだなと感心しました。特にサブスクは面白い発想です。
それに、今の話を聞いて、業者が閑散期を活用することでコストを抑えられる、という発想は良いなと思いましたが、我々としては恐怖にも感じました。このような会社が出てくると我々はやばいなと。今の間に仲良くしておいたほうがいいと思いました(笑)。
オーナーたちが一番、気にしているのは税金対策です。「メンパク」は不正ではなく、正当なやり方で税金対策ができる。なるほどなと感心してばかりです。
修繕といいつつ、実はファイナンスサービスなんですよね。
岩屋:そうなんです。このサービスの根源は、不動産のオーナーが困っていることに対して、一番都合の良いやり方を考案したことなんです。オーナーのキャッシュフローを改善し、投資しやすい環境を作ることが目的。なので、修繕は手段の一つであって、そもそもの考え方が違うんです。

人生100年時代のマンションの管理。

岩屋秀一朗●株式会社OWNERS CLUB 代表取締役社長
Photographing 石橋俊治

─人生100年時代の今、マンションに住んでいる者にとって、大規模修繕は深刻な問題と思っています。
岩屋:分譲マンションと賃貸マンションで違うと思いますが、分譲マンションは自分でお金を出しているのに、「自分のお金」という意識が賃貸マンションのオーナーに比べて非常に低く、管理会社任せになっていることが多いと思います。
管理会社さんを否定するわけではありませんが、マンションに使うべきところでないところに費用が掛かり、実際に修繕が必要な時に資金がない、ということが起こっています。
日本の建物はとても良いので、ちゃんとメンテナンスをすれば100年は問題ないんです。特にここ20年くらいのマンションは給排水の設備が外に出ていて、費用をかけずに維持できるようになっています。
なので、しっかりとした管理会社さんや、井端さんのところのようなコンサルタント会社に調査をしてもらい、適切な修繕を適切なタイミングでやることが大事だと思います。
─新築マンションも建つととたんに中古物件になってしまいます。そこでの問題点はなんでしょうか?
岩屋:日本には住宅に対する資産価値を明確にする指針がないことです。古い物件ほど融資が付きにくくなっています。そのため、金融庁が指針を作り、融資が付きやすくしようとしています。
ただ、現状は金融機関の判断にゆだねられています。ただ、場所がよくて常に満室だったら、融資がつけられれば、オーナーばかりでなく銀行にとってもメリットはあります。そのためには20年先、30年先も建築物に問題がないことが重要です。適切な修繕をすることで、中古物件であっても融資がつけば、キャッシュフローは良好になります。まさにそこは我々が取り組むべきことと考えています。
─今、不動産投資が流行っていますが、その点はどうなのでしょうか?
井端:間違いなく、人口は減り続けます。必要な物件数は減っています。部屋余りの状態になりますから、分譲マンションは買ったら動けないし、売るに売れない状態になるでしょう。
不動産投資をしている友人には「全部屋を購入して、マンションそのもののオーナーになって、スクラッチして建て替えるしかない」とアドバイスしていますが、費用も時間もかかるので現実的には不可能です。
駅から近いマンションなら資産価値もあるでしょうが、電車で何分、そこからバスで何分というところのマンションはどうしょうもないですね。そこは国が公的資金で買い取ってなんとかするしか解決策はないかもしれません。
岩屋:法律が変わらないと難しいですよね。私も国土省の賃貸住宅対策室の方とお話しをさせて頂きますが国と政府は頭を抱えています。
今後、街はゴーストタウン化していきます。家やマンションの所有者はいるのに所有者が家やマンションに興味もなければお金も出さない。
井端:親が頑張って購入した家やマンションでも、大きくなって独立した息子や娘が築30年以上も経った家やマンションを相続してもそこに住みませんからね。貸すか売るかしかありませんが、古い物件だと借り手も買手もいません。
─難しい問題ですね。
井端:家やマンションは早くに朽ち果てるのが良いと思うこともあります。
岩屋:分譲で立地条件の悪い場所は法的な問題もありますが、そこを改善して活用できるいい道を作らないといけないと思います。
そのためには修繕をきちんとやり、融資期間を長期に保つようにしてキャッシュフローを圧迫しない状態を作れば、問題なく回っていくと思います。そうすれば市場も活性化できると考えています。
新築の建設費は高くなっていますが、家賃の下落が激しくなっています。それを考えると中古を活用するほうが投資家としても良いと思います。中古は意外と家賃は下がりません。ゼロには絶対になりません。
─新築マンションを買って高く回そうというのはもう難しいということですね。
岩屋:だめですね。一気に下がります。それで多くのオーナーさんが苦しんでいます。
井端:オーナーさんに建て直すという人はいますか?
岩屋:いや、なかなかいらっしゃらないですね。東京の一等地ならまだしも、地方だと建て直しても割に合いません。解体だけでも大変な費用が掛かります。それに見合う家賃は取れません。
─不動産を持っているオーナーといえば、リッチなイメージがあります。
岩屋:オーナーにキャッシュフローを確認させてもらうのですが、見積りと照らし合わせるとパンクするオーナーはいます。
井端:自転車操業のオーナーもいますからね。
岩屋:リッチなオーナーもいますが、すべてがそうでもありません。

Photographing 石橋俊治

業務提携を推進させ、さらに発展させる。

─OWNERS CLUBではコラボレーションも多いですよね。2019年にドローンを活用したサービスを展開するドローン・フロンティアと業務提携をしています。
岩屋:業務提携はたくさんさせて頂いています。ドローン以外にも管理会社さんや税理事務所さんもあります。
井端:我々としても新しいビジネスモデルを作らないと、今後が苦しくなるということを実感しました。
─OWNERS CLUBの今後の展開はどうお考えですか?
岩屋:金融機関と共同でサービスを展開することを計画しています。築古の物件に30年の融資をつけてもらうための業務提携の話を進めているところです。
井端:保険会社が提携する、マンション保険みたいなのはありますね。
岩屋:最近は自然災害が多くなっているので、保険会社も厳しくなっています。
井端:ぜひ、何かあれば提携できればと考えています。
─私も勉強になりました。ありがとうございました。

Photographing 石橋俊治