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SFプロトタイピングでSFと企業をつなぐ。

企業がイノベートする際に必要なものは「創造力」と「想像力」だ。 そしてその、「創造力」と「想像力」を高めるうえで効果的なのが「SFプロトタイピング」である。 SFプロトタイピングとは、従来のコンサルタントファームが行うフォアキャスティングではなく、SFの力で未来を想像し、そこからバックキャスティングして今なにをすべきかを考えるための手法。 このSFプロトタイピングを企業に提供するアノン株式会社は、日本におけるSF作家などの職種団体である日本SF作家クラブとコラボレーションすることで、日本の企業の価値を高め、貢献できると考えた。 また、日本SF作家クラブとしてもSF作家たちのビジョンやマインドが社会に対して貢献できることは意義あると考えている。そして、日本SF作家クラブには年に一度開催する「日本SF大賞」の運営というミッションがあり、この「日本SF大賞」のために企業からのスポンサードは必要不可欠になっているという事情もある。 この2社ががコラボレーションすることで、「企業」と「SF」という、従来では相反するものがテクノロジーの世界でより密接に関係するようになる。 【左】森竜太郎●アノン株式会社 代表取締役 UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)卒業後、インターネットメディアやサービスのデザイン及びグロースに従事。その後、培養肉開発を進めるインテグリカルチャーの創業CFO/CMOを経験。上場企業複数社との提携を推進し、官民から3億円を調達。並行して空飛ぶ車を開発するCARTIVATORの事業責任者を兼務。トヨタ系15社などからの協賛金獲得に貢献。 2019年からアノン株式会社の代表取締役を務める。 アノン株式会社 【右】藤井太洋●SF作家/日本SF作家クラブ理事 ソフトウェア開発会社に勤務しながら小説を執筆。2012年、電子書籍で『Gene Mapper -core-』を発表。2013年、同作品を増補改稿した『Gene Mapper -full build-』(早川書房)で単行本デビュー。 2015年、『オービタル・クラウド』で第35回日本SF大賞を受賞、第46回星雲賞を受賞。同年、第18代日本SF作家クラブ会長に就任。2019年、『ハロー・ワールド』で第40回吉川英治文学新人賞を受賞。 日本SF作家クラブ SFプロトタイピングで企業の事業を創出する。 森竜太郎●アノン株式会社 代表取締役Photographing 山本ヤスノリ ─アノンとは何を実現しようとする会社なのでしょうか? 森:「SFの社会実装を通じて社会経済の発展に貢献する」をミッションに掲げる、ちょっと変わった会社です。 私は培養肉開発や空飛ぶ車の事業開発といったSFのような仕事に携わってきました。そのため、私にとってSFは「読むもの」でも「見るもの」でもなく、「やるもの」だったんです。 従来、SFは多くの技術者や科学者をインスパイアしてきました。その結果として社会経済が発展して来た歴史があります。そこで、自然発生的に生まれたこの現象を、より体系的に実現しようと考えたのが創業理由です。 SF作家や研究者を中心とするコミュニティを形成し、ビジョンに賛同する共同研究パートナーと、「SFプロトタイピング」を中心とした体系的かつ創造的な手法を駆使して未来を共に描いて行こうと考えています。 ─SFプロトタイピングとはなんなのでしょうか? 森:簡単にいうと、SFの執筆と発想を用いて、企業のビジョンを拡張し、大胆かつ独創的な事業を創出するための手法です。 既存のニーズにフォーカスするデザイン思考や、イシューから始めるコンサル思考では描けないような事業構想を描き、そこからバックキャスティング、つまり逆算して事業計画を立てて行くことが可能となります。そのことで戦略策定方法の序章的位置付けにすることができるのがメリットです。 ─SFプロトタイピングにはどのような事例がありますか? 『インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング』SF通じて、技術の将来のインパクトを描く。未来の予言ではなく、未来と対話することで製品開発を行う。 森:最も有名なのが、米インテル社の製品開発での応用です。米インテル社のフューチャリスト(未来研究員)であるブライアン・デイビッド・ジョンソンが、著書『インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング』を2013年に刊行しています。米インテル社だけでなく、海外にはフューチャリストやフューチャビジョナリーを置く企業は数多くあります。 日本ではなかなかSFプロトタイピングは理解されていませんが、アメリカにはSFプロトタイピングに特化したスタートアップ「Sci-Futures」があります。この会社のクライアントにはVisaやフォード、ペプシコ、北大西洋条約機構(NATO)などが軒を連ねています。 ─Visaやフォード、ペプシコと聞いてもSFとは無縁な気がします。 森:今は技術が加速度的に成長しています。それはIT分野だけの話ではなく、食品や自動車においてもテクノロジーによって従来の製品がひっくり返るようなことが起きています。これからの技術の発展によって、将来、どのような風景が見えるかは予測できない状況です。 アノンでは新規事業企画のコンサルタントを行っていますが、よく「10年後の未来を描いて欲しい」と言われます。そのようなビジョン戦略をコンサルタント会社に依頼すると、彼らは社会や経済、政治などを分析し、将来どのようなトレンドが発生するのかをフォアキャスティングします。しかし、それでは現状の延長しか見えてきませんし、見えてくる未来の幅はとても狭いものです。私が行っているのは、幅を拡張するお手伝いです。 ─具体的に言うと? 森:私のクライアントに食品会社があります。ここでも同様に「10年後の未来を描いて欲しい」というオーダーがありました。私は先端技術の調査を行い、市場に出で間もない技術や、まだ出てこない技術を探索し、その情報をSF作家に共有し、技術を踏まえた、もしくは踏まえない自由な発想で10年後の食品をSFプロトタイピングしてもらいました。すると食品会社の人達が想像していた以上の発想が出てきました。このように誰もが思いつかなった未来を描くことができます。 一般社団法人として生まれ変わった日本SF作家クラブ。 藤井太洋●SF作家/日本SF作家クラブ理事Photographing 山本ヤスノリ ─日本SF作家クラブとはどのような組織なのでしょうか? 藤井:日本SF作家クラブは1963年に、小松左京、星新一、筒井康隆など、日本で戦後、SFを書き始めたSF作家を中心に、翻訳者や評論家、編集者達が発足させた親睦団体がスタートです。 その後、SFブームによってSF作家やSF作品が増え、SF小説から漫画はもちろんアニメやゲームとSFが拡がったことにより、活動の軸が移行して行きました。現在、最も大きな事業が1980年から始まった「日本SF大賞」です。2019年度で第40回を迎えました。 ─日本SF大賞はこれからも継続させる事業なのですか? 藤井:日本SF作家クラブは日本SF大賞を主宰・運営する団体です。日本SF作家クラブの会員も200名近く増えてしまうと意見も一致するものでもありません。しかし、団体として共同で行える日本SF大賞という事業は大きな柱だと言えます。もちろん、性格を変えて行く、例えば外部の審査員を入れるなどはあるかもしれませんが、基本的には継続させて行く方針です。 日本でSFを作っている人かいる以上、今年一番素晴らしい成果を出した人を表彰する。それを毎年続けることは意義があることですし、その行為にも意義があることです。 ─2017年に一般社団法人になりましたね。 藤井:一般社団法人になって大きく変わったのは「会社」になったということです。それまでは決定の場が総会しかありませんでした。ところが企業とコラボレーションすることも多くなり、決定をしなければならない場面が増えました。そのため、理事を置き、適宜理事会で話し合って事業を運営するスタイルに変えたんです。 森:藤井さんが会長として、一般社団法人化を推進されたのだとか。 藤井:私は2015年に会長になりましたが、任期3年のうち初めの2年を使って準備をしました。2017年に一般社団法人 日本SF作家クラブを作り、会員にはそれまでの親睦団体 日本SF作家クラブから移行してもらいました。親睦団体を一般社団法人にメタモルフォーゼできないからです。なので実は親睦団体 日本SF作家クラブも存在はしているんです。 森:存在しているんですね。 藤井:しています。その意味では私は親睦団体 日本SF作家クラブの最後の会長で、一般社団法人 日本SF作家クラブの最初の会長なんです。 ─日本SF作家クラブが一般社団法人になってどのような変化がありましたか? 藤井:特に変わったことはありませんが、一般社団法人はさまざまな活動が認められているので動きやすくはなりました。また、金銭のやり取りができるようになったのは大きなメリットです。親睦団体では利益を会としてプールすることはできません。また、企業とコラボレーションするにしても日本SF作家クラブとしてコラボできないため、企業は作家個人と契約することになります。すると日本SF作家クラブが間に入る必要性がありません。それが一般社団法人化したことで企業とのコラボレーションもしやすくなりました。 SFと企業がコラボレーションすること。 ─企業とコラボレーションしたものに清水建設との「建設的な未来」がありますね。 藤井:清水建設のテクノロジーを活用した生まれる未来を物語にしたものです。あれは「日本で最初のSFプロトタイピング」と呼んでもいい活動だと思います。 建設的な未来清水建設と日本SF作家クラブによるコラボレーション。清水建設が持つ様々なテクノロジーを活用することで、どのような未来が創造できるかをショートショートで描くシリーズ。 森:どの作品も読みごたえがありました。企業の未来をSF作家が考えるwebサイトがあってもいいと思うんです。そこに様々な企業の未来を貯めて行く。さらにその未来にコメントが付けられるようになっていて、サイエンティストやオーディエンスも参加できるようにする。そんなオープンコミュニティができると面白いと考えています。 ─日本SF作家クラブが企業とコラボすることに対してはどのようにお考えですか? 藤井:企業がSFに興味を持ってくれることはとても嬉しいことですし、SFを発表する場を提供してくれることは望ましいことです。 企業がSFを、未来を予測する手法のひとつして期待するのはとてもよく解ります。そのためSF作家がコンサルタントのフォアキャスティングとはまるで異なる結果を出してくれるかもしれないという思惑に応えることは大事だと思います。その活動としてストーリーを執筆して提供することや、なんらかしらのお話しをする機会などあれば、喜んで日本SF作家クラブの会員に声をかけて行きたいと思っています。 ─企業からのオーダーは制約も多いと思うのですが、そこでのやりにくさはありませんか? 藤井:私自身、会社員の経験があるので、企業が求めるものは肌感覚でなんとなく理解できます。 例えば、SF小説はディストピアの方が読者を惹きつけやすく、SF作家としても滅亡をテーマに書くのは楽しいのですが、そのような物語と企業が見たい、知りたい物語は違うものです。 森:私は必ずしも企業の明るい未来といったニーズに応えることだけがゴールではないと考えています。「未来の可能性を探索する」ことが最も重要で、そのためにはディストピアも皮肉も必要だと思うんです。 確かに、私が企業に「SFプロトタイピングをやりましょう」と提案すると、どうしても理想的な明るい姿を求められます。しかし、悪夢を描くことも大事です。この技術を使うことで将来、どのようなことが起きるのかを考える。それが暗い未来なら、その訪れるかもしれない暗い未来を受け止める準備をすることも重要になってくると思うんです。 藤井:自動車メーカーから「未来の自動車を描いてくれ」とオーダーがあった場合、SF作家が真面目に考えたら、自動車のない未来を描いてしまいます(笑)。空を飛ぶ自動車、もしくは人間が運転しない自動車。あってもシェアエコノミーの自動車。どう考えても自動車メーカーにとってはディストピアです。もちろん、そのことは自動車メーカーにしてもわかっていることですけどね。 ─企業は「未来予想」を求めますが、SFは未来予想ではない、という問題もありますよね。 藤井:未来を予想しても当たらないですからね(笑)。例えば新型コロナウイルスなんて予想できませんでした。疫病が起こるのは予想できたとしても、実際にパンデミックが起きると想定外のことばかりが発生する。誰にもこうなるとは予測できません。しかし、パニック状態になったとき、人間はどのように反応するのか、行動するのかは小説の中で書くことは出来ます。 森:私もあるクライアントにSFプロトタイピングを提案したら「こんなコロナの時代にSFなんか考えられない」と言うので、「コロナの時代だからこそSFを考えないといけないんじゃないですか」と説得しました。この未曽有な事件で人間はどのような反応し、行動するのか、それはビジネスにどう影響するのかを考えないといけないと思うんです。まさに今はSFプロトタイピングが必要な時代なんです。 藤井:大きな事件があると人は統計で物事を見ようとします。膨大なデータを分析した結果、こうですと。例えば、犯罪者の顔をデータ化して、「犯罪を犯しやすい人はこんな顔です」と結論付けたり。 森:犯罪を犯しやすい顔を統計で割り出すことは簡単ですが、それはおかしくなりますよね。 藤井:おそらくSFは、「それはおかしいですよ」と気づかせてくれる装置なんです。そこにピットフォールがあるということを示すことができるのがSFです。 SFと企業がコラボレーションすることで未来を描く。 ─今後、企業とのコラボレーションは進みますか? 藤井:日本SF大賞を継続させるためには、日本SF大賞にスポンサードして頂く必要があります。そのためスポンサーが提供しているプラットフォームを使うなどして恩返しをする必要はあると思っています。 ─今後の展開はどうなのでしょうか? 森:我々は企業に対してSFプロトタイピングの提供をスタートさせたところです。ようやく価値を感じてもらえるようになりました。まずはそこをしっかり続ける。より一層、SFプロトタイピングを活用してコンサルティング事業を推進したいと思っています。また、内閣府がムーンショット計画を推進させていますが、私はそれに対するアンチテーゼとしてSF作家やコンサルタントなどさまざまな人の力を借りて2050年の国家ビジョンを作りたい。そのビジョンが出来ることでインスパイアされた技術者が新しい会社を立ち上げたら、そこに向けて投資をして行くことも考えています。 ─アノンと日本SFクラブとのコラボレーションは可能ですか? 藤井:何かあればぜひ、一緒にやりたいですね。 森:私もぜひ、一緒に企画したいと思います。これから相談させてください。

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マンションの大規模修繕問題にコンサルタントとサービスで支援。

事業の基本は「課題解決」だと言える。株式会社OWNERS CLUBが推進する「メンパク」はマンション経営者が抱える様々な課題を解決するために誕生した。 こうした業界の新しいトレンドをいち早くキャッチし、次のビジネスを模索する株式会社MTKの井端一雅氏と、井端氏が注目する株式会社OWNERS CLUBの岩屋秀一朗氏とをセッティングした。 大規模修繕は決して、マンション経営者だけの課題ではない。人生100年時代において「住む場所の質」が求められることでもある。 似たような業界なのに接点があまりないもの同士が語る、これからのマンションとは? 【左】井端一雅●株式会社MTK 一級建築士事務所 常務執行役員/東京本店長 株式会社MTKは1999年3月12日の設立。マンション等建築物の長期修繕計画の作成、大規模改修・設備改修コンサルティング、耐震診断、耐震補強設計・監理、各種建築・設備法定点検、年次点検、建替えに伴うコンサルティングを業務とする。 株式会社MTK 【右】岩屋秀一朗●株式会社OWNERS CLUB 代表取締役社長 株式会社OWNERS CLUBは2005年4月1日の創業。「求められている今ないものを創造し、提供する」を経営理念に掲げ、「メンパク」を展開。「メンパク」とは、毎月定額のメンテナンス料で外壁補修や塗装、防水工事等、マンション外部全体の修繕工事とその後のメンテナンスを15年間継続してご提供する日本初の定額制マンション修繕サービス。 株式会社OWNERS CLUB 「メンパク」は単なる大規模修繕のサービスではない。 井端一雅●株式会社MTK 一級建築士事務所 常務執行役員/東京本店長Photographing 石橋俊治 ─MTKとはどういう会社なのですか? 井端:1999年に大阪で創業した一級建築士事務所です。分譲マンションの大規模修繕のコンサルティングを中心に、年に約60~70件、トータルで約1000件を手掛けてきた実績があります。 東京本店を開設したのは、創業20年にあたる2018年のことです。今後、少子化小世帯化の影響によって新築マンションの建設は減っていくと思われます。すると我々が本業とする分譲マンションの大規模修繕コンサルティングも減少することになります。そのため本社のある阪神エリアより10倍の市場があると言われている首都圏エリアを、今から取り込んでおきたいと考えたからです。 とはいえ、少子化小世帯化によって首都圏も先細りになるのは目に見えています。また、競合も多くコンサルタントフィーの価格競争が厳しくなる上に、設計コンサルタントと施工会社の癒着やバックマージンを要求する悪徳コンサルタントと一線を画する必要もあります。 我々としては来るべき未来のために、分譲マンションの大規模修繕のコンサルティングを核としながら、事業のすそ野を広げて行かなければならないと考えているところです。 ─同様にOWNERS CLUBとはどういう会社なのですか? 岩屋:2005年に福岡県で創業し、「メンパク」という事業を展開しています。 元々は、岩山産業という1964年に祖父が起業し、父親が継いだ会社の代表を三代目として務めていました。岩山産業は受変電設備の品質管理や試験調整、機械器具設置工事などを請け負う、B2Bの会社です。ちなみに現在は弟が継ぎ、私は専務を務めています。 OWNERS CLUBを起業することになった事の起こりは、北九州にある小さな会社が集まったTSSというグループが切っ掛けです。ここは、各社の力を合わせることでトータルにお客様を支援するために生まれた企業連携体です。私は岩山産業の代表として参加していました。 このTSSの集まりに、不動産のオーナーとして築40年を超える賃貸物件を40棟くらい管理している方が出席していました。その方は「古い物件ばかりなので修繕費がかさむ」という悩みを抱えていました。 毎年、計画を立て予算を取って修繕しても、計画通りに行かないことも多々あったからです。予算以上に費用が掛かることもあるし、逆に予算を下回った場合、今度はそこに税金が掛かってしまう問題もありました。 そのため、毎月定額で費用を払い、業者に物件のメンテナンスをしてもらっていました。このシステムを事業化できないだろうかと提案したことに対し、私が手を挙げたことで誕生したのがOWNERS CLUBです。 『メンパク』毎月定額のメンテナンス料で、賃貸マンションの修繕を15年間継続してご提供する修繕サービ。 ─そういう経緯があったのですね。 岩屋:実は私は岩山産業の代表でしたが、自分で起業したいと思っていたんです。元のアイディアもあり、メリットもわかっていたので、私は資料を作成したり営業をかけるなどして事業を軌道に乗せるよう邁進していました。 ─「メンパク」について教えてください。 岩屋:毎月定額のメンテナンス料で、賃貸マンションの修繕を15年間継続してご提供する修繕サービです。 不動産のオーナーは、不動産の修繕をする場合、業者に依頼します。業者はどれくらい修繕をしなければいけないかを診断し、見積を出し、OKが出れば期間を決めて一気に修繕工事をします。そして工事が終わったら請求するという流れが一般的です。 「メンパク」も修繕物件を診断しますが、建築物は東面と西面で痛みが違う場合がありますし、直すべき箇所は異なります。なので、一気に修繕工事をせず、工事を分けて、最適なタイミングで最適な修繕をします。工事も外壁補修、塗装、防水工事など、一般的なマンション外部全体の修繕工事と変わりありません。 ─なるほど。 岩屋:一番、肝となっているのは、修繕をすれば終わりというわけではなく、15年という長期の契約の中で、メンテナンスもつけているところです。 そのことによってどのようなメリットがあるのかというと、通常、大規模修繕を行っても、15年たってまた大規模修繕をしなければならないという場合があります。 最初の大規模修繕に2000万円掛かっていたとすると、15年後には建物は劣化するので15%から20%は上昇します。すると2300万円から2400万円は掛かってしまう計算です。それが30年後、45年後となると恐ろしい金額なります。 しかし、15年の中でメンテナンスをし続けることで、建物を良い状態に保てます。そのため、その後の大規模修繕の費用を抑えることができるのがメリットです。 ─いいですね。 岩屋:不動産のオーナーは大規模修繕をするとき、銀行から借り入れますが、定額制にすることでその必要はありません。つまり、金利を払う必要がなくなるのです。 また、不動産のオーナーの悩みは金利の負担ではなくキャッシュです。20年かけて返せばよいのなら金利が高くても大丈夫なのですが、10年で返さないとなるとキャッシュが圧迫されて不動産経営が成り立ちません。 「メンパク」だと15年と決まっているのでキャッシュフローが安定します。しかも、それを全額、経費として処理できます。 井端:毎月の賃貸料のなかで管理費を取り、それを払えばいいだけでということですね。 岩屋:そうなんです。通常、不動産のオーナーが大規模修繕のために資金を貯めておこうとすると、それは利益とみられて税金を払わなければなりません。「メンパク」だと無駄がなくなります。 ─失礼な言い方なんですが、15年の間にOWNERS CLUBが倒産した場合、どうなるのでしょう? 岩屋:実は15年計画ですが、最初の10年くらいで全体の工事を終わらせてしまいます。つまりOWNERS CLUBが先に費用を負担します。なので、仮にOWNERS CLUBが倒産すると不動産のオーナーは得をするんです(笑)。 ─なるほど(笑)。 岩屋:また、メリットは不動産のオーナーだけではありません。業者は痛みの激しい部分から修繕に取り掛かればいいし、閑散期にその工事をやってもいいので、仕事のバランスが取れます。 ─井端さんは「メンパク」を面白いと思ったそうですが、どのような理由からなのですか? 井端:建物は一生ものです。不動産のオーナーにすれば、修繕しないでなるべく長持ちさせたいと考えています。しかし、大規模修繕は必要となります。賃貸人に「大規模修繕をやるので賃料を上げます」と言ってもなかなか通るものではありません。分譲マンションにある修繕積立金という制度がないのでお金を貯めると課税されます。そのため不動産のオーナーはいろいろ工夫されているみたいです。 3年前ほど前に、オーナー達の集まるある会合に出席したとき「メンパクというのがあって」という話が出て知りました。魅力的なビジネスを考える人がいるもんだなと感心しました。特にサブスクは面白い発想です。 それに、今の話を聞いて、業者が閑散期を活用することでコストを抑えられる、という発想は良いなと思いましたが、我々としては恐怖にも感じました。このような会社が出てくると我々はやばいなと。今の間に仲良くしておいたほうがいいと思いました(笑)。 オーナーたちが一番、気にしているのは税金対策です。「メンパク」は不正ではなく、正当なやり方で税金対策ができる。なるほどなと感心してばかりです。 修繕といいつつ、実はファイナンスサービスなんですよね。 岩屋:そうなんです。このサービスの根源は、不動産のオーナーが困っていることに対して、一番都合の良いやり方を考案したことなんです。オーナーのキャッシュフローを改善し、投資しやすい環境を作ることが目的。なので、修繕は手段の一つであって、そもそもの考え方が違うんです。 人生100年時代のマンションの管理。 岩屋秀一朗●株式会社OWNERS CLUB 代表取締役社長Photographing 石橋俊治 ─人生100年時代の今、マンションに住んでいる者にとって、大規模修繕は深刻な問題と思っています。 岩屋:分譲マンションと賃貸マンションで違うと思いますが、分譲マンションは自分でお金を出しているのに、「自分のお金」という意識が賃貸マンションのオーナーに比べて非常に低く、管理会社任せになっていることが多いと思います。 管理会社さんを否定するわけではありませんが、マンションに使うべきところでないところに費用が掛かり、実際に修繕が必要な時に資金がない、ということが起こっています。 日本の建物はとても良いので、ちゃんとメンテナンスをすれば100年は問題ないんです。特にここ20年くらいのマンションは給排水の設備が外に出ていて、費用をかけずに維持できるようになっています。 なので、しっかりとした管理会社さんや、井端さんのところのようなコンサルタント会社に調査をしてもらい、適切な修繕を適切なタイミングでやることが大事だと思います。 ─新築マンションも建つととたんに中古物件になってしまいます。そこでの問題点はなんでしょうか? 岩屋:日本には住宅に対する資産価値を明確にする指針がないことです。古い物件ほど融資が付きにくくなっています。そのため、金融庁が指針を作り、融資が付きやすくしようとしています。 ただ、現状は金融機関の判断にゆだねられています。ただ、場所がよくて常に満室だったら、融資がつけられれば、オーナーばかりでなく銀行にとってもメリットはあります。そのためには20年先、30年先も建築物に問題がないことが重要です。適切な修繕をすることで、中古物件であっても融資がつけば、キャッシュフローは良好になります。まさにそこは我々が取り組むべきことと考えています。 ─今、不動産投資が流行っていますが、その点はどうなのでしょうか? 井端:間違いなく、人口は減り続けます。必要な物件数は減っています。部屋余りの状態になりますから、分譲マンションは買ったら動けないし、売るに売れない状態になるでしょう。 不動産投資をしている友人には「全部屋を購入して、マンションそのもののオーナーになって、スクラッチして建て替えるしかない」とアドバイスしていますが、費用も時間もかかるので現実的には不可能です。 駅から近いマンションなら資産価値もあるでしょうが、電車で何分、そこからバスで何分というところのマンションはどうしょうもないですね。そこは国が公的資金で買い取ってなんとかするしか解決策はないかもしれません。 岩屋:法律が変わらないと難しいですよね。私も国土省の賃貸住宅対策室の方とお話しをさせて頂きますが国と政府は頭を抱えています。 今後、街はゴーストタウン化していきます。家やマンションの所有者はいるのに所有者が家やマンションに興味もなければお金も出さない。 井端:親が頑張って購入した家やマンションでも、大きくなって独立した息子や娘が築30年以上も経った家やマンションを相続してもそこに住みませんからね。貸すか売るかしかありませんが、古い物件だと借り手も買手もいません。 ─難しい問題ですね。 井端:家やマンションは早くに朽ち果てるのが良いと思うこともあります。 岩屋:分譲で立地条件の悪い場所は法的な問題もありますが、そこを改善して活用できるいい道を作らないといけないと思います。 そのためには修繕をきちんとやり、融資期間を長期に保つようにしてキャッシュフローを圧迫しない状態を作れば、問題なく回っていくと思います。そうすれば市場も活性化できると考えています。 新築の建設費は高くなっていますが、家賃の下落が激しくなっています。それを考えると中古を活用するほうが投資家としても良いと思います。中古は意外と家賃は下がりません。ゼロには絶対になりません。 ─新築マンションを買って高く回そうというのはもう難しいということですね。 岩屋:だめですね。一気に下がります。それで多くのオーナーさんが苦しんでいます。 井端:オーナーさんに建て直すという人はいますか? 岩屋:いや、なかなかいらっしゃらないですね。東京の一等地ならまだしも、地方だと建て直しても割に合いません。解体だけでも大変な費用が掛かります。それに見合う家賃は取れません。 ─不動産を持っているオーナーといえば、リッチなイメージがあります。 岩屋:オーナーにキャッシュフローを確認させてもらうのですが、見積りと照らし合わせるとパンクするオーナーはいます。 井端:自転車操業のオーナーもいますからね。 岩屋:リッチなオーナーもいますが、すべてがそうでもありません。 業務提携を推進させ、さらに発展させる。 ─OWNERS CLUBではコラボレーションも多いですよね。2019年にドローンを活用したサービスを展開するドローン・フロンティアと業務提携をしています。 岩屋:業務提携はたくさんさせて頂いています。ドローン以外にも管理会社さんや税理事務所さんもあります。 井端:我々としても新しいビジネスモデルを作らないと、今後が苦しくなるということを実感しました。 ─OWNERS CLUBの今後の展開はどうお考えですか? 岩屋:金融機関と共同でサービスを展開することを計画しています。築古の物件に30年の融資をつけてもらうための業務提携の話を進めているところです。 井端:保険会社が提携する、マンション保険みたいなのはありますね。 岩屋:最近は自然災害が多くなっているので、保険会社も厳しくなっています。 井端:ぜひ、何かあれば提携できればと考えています。 ─私も勉強になりました。ありがとうございました。

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